2009年11月15日

まちおこし発想を超えよう

スプリング8

行政刷新会議の事業仕分けで、スプリング8の予算を削減するとの判断がなされました。

スパコン、スプリング8「削減」 地元が反発(神戸新聞)
「理解できない」「冗談では」-。政府の行政刷新会議による13日の事業仕分け。神戸市で進む次世代スーパーコンピューター事業は事実上の凍結と判定され、兵庫県西部の播磨科学公園都市にある大型放射光施設スプリング8も「予算大幅縮減」とされた。地元関係者は反発、予算確保を求める声が相次いだ。
(中略)
「ここでしかできない実験が多く、科学の発展や国際貢献の面で大きな後退だ」。県立大学大学院の八田公平教授(48)は疑問を投げかける。スプリング8を使って脳の構造を細胞レベルで解析する研究をしており「未来への投資をせず、目先にとらわれて削減すれば、遅れを取り戻すのは難しくなる」と指摘した。
播磨科学公園都市の広域行政を担う播磨高原広域事務組合の西田正則管理者(たつの市長)は「企業進出にも悪影響は避けられないのでは」と懸念を示した。
原因は、神戸新聞の見出しがすべて物語っているように思います。

反発しているのはあくまで「地元」。全国から反発のブーイングが起きているわけではありません。
地元以外の人は、「スプリング8って何?」「それ、何か役にたってるの?」という反応が当然と思います。

あと感じたのは、「企業進出に悪影響」みたいなのが反発の理由として記事になれば、予算削減の後押しになるだろうなということです。

スプリング8がいかに成果を出しているか、将来の科学技術の推進のために必要かを、普段から地元以外の人にもPRし、理解しておいてもらわなければ、「地元の反発」、つまり地域の問題として片付けられてしまいます。直接の研究者を除く、地元以外の世間一般の支持は得られません。

まさに今回、「仕分け人」と称する地元以外の一般の人に削減されそうになっているわけです。
2年前のブログにも書いていた上海版「スプリング8」が今春、竣工しています。

中国最大の科学装置「上海光源」が竣工(China.org.cn)
世界20カ所にある第3世代放射光施設中、「上海光源」のエネルギー規模は、日本、米国、ヨーロッパの各施設に次いで世界第4位。中国台湾地区、日本、韓国、インドの第3世代放射光施設とともに、欧米に匹敵するアジアの放射光施設群を形成している。
東アジアの中核的な研究施設と位置づけた上で適切な予算かどうかを議論すべきで、地元がどうとか、企業誘致がどうとか言うこと自体、行政刷新会議の意見を後押ししているようにしか見えません。

スプリング8は、そんな「まちおこし」次元で反発して欲しくないほど、重要な研究拠点だと、私は感じています。

参考
科学技術立国の理想は死んだ(ユーキの有機ラボ) - SPring-8は多くの利用者があるものの赤字!であるため予算縮小になりました 研究成果はHP見ればわかるように十分だと思います あれだけの機械を使わないのがもったいないよ 世界的にはさらに大きなものも建造されるぐらい重要かつ有用な設備にもかかわらず 予算削減とは何事か!(ブログより)
播磨で発見!水は均一ではなかった(372log@姫路)
播磨からノーベル賞も(372log@姫路)

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Posted by miki at 00:49│Comments(9)科学
この記事へのコメント
次世代スーパーコンピューターなどの科学技術関連予算が事業仕分けで見送られるようでは、民主党政権には夢も希望もない。
ノーベル賞受賞者が怒るのも無理は無い。
民主党の蓮舫のような科学技術に無知で、日本の将来に無関心な人物が仕分け人では、致し方ないこと。
毎年2.5兆円の税金を使う高速道路無料化は、無駄な予算であるから、事業仕分けによって廃止してもらいたい。
Posted by 夢も希望も無い民主党 at 2009年11月15日 07:56
夢も希望も無い民主党さん

コメントありがとうございます。
Posted by mikimiki at 2009年11月15日 09:10
spring8の重要性は理系の研究者なら日本中だれでも知っているはずです。

今回の予算削減に対して一企業研究者として残念に思います。
Posted by yoshi at 2009年11月15日 10:45
yoshiさん

コメントありがとうございます。

>理系の研究者なら日本中だれでも知っているはず

理系の研究者以外には全く知られていない気がします。
新聞報道でも、「カレー事件で活躍した・・」ですから。
Posted by miki at 2009年11月15日 17:00
リメイク版の映画「日本沈没」の冒頭にspring8が出てきて、「ついに普通の映画にも出るようになったか」と少し誇らしく思っていたので、
播磨と理系以外にはまだまだ認知されてなかったのか、と寂しい思いです。

追伸:今日のモノレールの一般公開に行ってきました。
前日に石見利勝市長のご講演でモノレールについて伺ったこともあり、石見元秀元市長の先見力に改めて感心しました。
Posted by skyline@姫路出身愛媛在住 at 2009年11月15日 21:05
skyline@姫路出身愛媛在住さん

コメントありがとうございます。
モノレール大盛況でしたね。
Posted by mikimiki at 2009年11月16日 07:14
一般市民の支持が無い・・・・

1万人越えのモノレール限定公開の盛況ぶりも「今の時代」だからでしょう。モノレール自体の思想は当時殆ど理解されず、単なる手柄山との観光交通の認識が世間を覆った結果、反対派市長が当選しモータリゼーション施策全開の状況になったのはご存知の通り。元々モノレールは環状線構想でしたし、新幹線が姫路バイパス沿いに出来る前提で、昔のポートライナーのように片方向のループでJR姫路駅周辺の商店エリアと、駅南大路の商業エリアを結んで広く市街地を伸ばし有機的に機能させるつもりが、どうこう・・とまぁ当時の一般人はそこまで認識しなかったわけです。最近世間的にはLRTでとかコンパクトな街づくりが・・とかトランジットがとか言ってますが、発想自体はあの頃からあり、その残骸が姫路モノレールでもあるわけで、

今回の民主の削減でもそうですが「貧すれば鈍する」の目先のことばかりで、結局ウン十年後、「あの時仕分け人と称したバカどもが」と後世言われそうな話です。
Posted by 気付く頃には手遅れか at 2009年11月16日 22:52
気付く頃には手遅れかさん

コメントありがとうございます。

事業仕分けの体育館(?)で交わされたやりとりを(見学に行ってないため)聞いてないので、わかりませんが、
「聖域に切り込む」という趣旨のパフォーマンスなんだとしたら、一応「聖域」の位置づけにはされているということなんでしょうかね。
Posted by mikimiki at 2009年11月17日 00:21
  ダイセルの久保田博士のCCSCモデルは姫路商工会議所で初めて聞きましたが、想像以上の大反響でノーベル賞候補ともうわさされるようになりました。
Posted by オイル関係 at 2020年08月22日 01:26
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