2008年02月17日

松下に補助金がいるのか

液晶工場建設予定地(姫路市飾磨区

連結売上9兆円の巨大企業・松下電器産業は、今年度の第3四半期、過去最高の営業利益となりました。

松下、営業・当期利益ともに過去最高 10~12月期(asahi.com)
松下電器産業は31日、07年10~12月期(第3四半期)の連結決算を発表した。売上高は日本ビクターが連結から外れた影響で前年同期比3.8%減り、2兆3445億円。だが、営業利益は同21.8%増の1653億円、当期利益は同46.4%増の1151億円と、ともに第3四半期として過去最高となった。

こうした豊富な資金を背景に、鈍化傾向の見えるプラズマテレビとともに、液晶テレビにも積極投資し、テレビの世界的な覇権争いに打って出る道を選びました。このたび、シャープ堺工場稼動時期に合わせて、姫路に新工場を設立することを発表しました。

松下、姫路に液晶パネル工場 10年1月の稼働目指す(asahi.com)
松下電器産業は15日、兵庫県姫路市に薄型テレビ向け液晶パネルの新工場を設立すると発表した。3千億円を投じ今年8月に着工、10年1月に稼働させる。
(中略)
調査会社によると、30型台の薄型テレビに占める液晶のシェア(台数ベース)は、全世界で06年の70%から、11年には97%に達する見通し。松下も液晶のてこ入れが急務だ。
(中略)
もう一つは、次世代薄型テレビの有力候補とされる有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)事業の本格化への布石だ。
液晶と有機ELは、製造工程で共通点が多く、転用も可能といわれている。松下は現在、研究開発段階にとどまっている有機ELについて、将来は新工場で生産できる体制を整えたい考えだ。

フル稼働時の生産能力は32型換算で年1500万台。仮に1台3万円とすると0.5兆円。
ただでさえ製造品出荷額で2兆円(全国14位。参考)と、人口で3倍の神戸(2.5兆円)に迫る勢いの姫路ですが、いずれは神戸を抜き去るのではないでしょうか。

松下の工場設立決定を受け、最寄交通機関の山陽電鉄は、路線バス開設を検討しています。

「県知事ら税収増、活性化に期待 松下、姫路進出(神戸新聞)(08.07.11 見出し誤記修正)
妻鹿駅が新工場の最寄り駅となる山陽電鉄は「沿線のにぎわいにつながり、大歓迎」。同駅は普通電車などが停車するだけだが、同社は「特急の停車や、バスの路線開設も考えたい」と話している。

実現すれば、姫路市内に神姫バスに次ぐ2社目の市内路線バス事業者が進出することになります。姫路市バスから神姫バスへの路線譲渡で、神姫バスの1社独占傾向が強まっていただけに、山陽電鉄バスの進出は大歓迎です。

ところで、驚いたことに一般会計2000億円規模の姫路市が、6年間で100億円もの助成金を出すといいます。

姫路市、松下に100億円助成――液晶パネル新工場、雇用など波及期待(日経ネット)
松下電器産業などが兵庫県姫路市に薄型テレビ用の液晶パネル工場新設を正式発表したのを受け、姫路市は15日、6年間で約100億円の奨励金を助成すると発表した。雇用など波及効果を期待し、市レベルの企業助成額としては異例の大きな規模だ。

慶応大上山信一教授は、自治体の補助金が企業の経営判断に結びつくわけではないと言います。

自治体の企業誘致を巡る報道への疑問(上山信一@"見えないもの"を見よう)
大規模投資は社運を左右する。会社側は地盤や水や道路、労働力、そして地価などを総合判断して決める。「自治体の補助金」「市長や知事の熱意」「熱心な働きかけ」などを決め手に経営判断はしない。地主が役所の場合は別だが、民有地や工場跡地の再開発で自治体が「誘致」したと果たしていえるのか。
(中略)
誘致のための「補助金」は「役所と首長の手柄」を演出するために現実の必要性と関係なしに出される場合がある。あるベンチャー経営者は役所嫌いで有名だが、地方に工場を建設する際に「とにかく補助金をもらってくれ。選挙も近いし」と村長に迫られたそうだ。

今回の場合、松下の経営状況も良く、また対象となる土地は出光興産の所有地。普通に考えれば、松下に補助金は不要であり、「役所の手柄を演出するための補助金」の意味合いが強いのではないでしょうか。

参考
姫路にバスを走らせませんか(ひめナビブログ) - たとえばはくろとか山陽バス、全但バス岡電バスなんかにも進出してもらいたいと思います。岡山なんてバス会社が7社もあるのに、姫路は神姫バスが独占というのでは、情けない。(ブログより)
大企業誘致へ札束ばらまき競争(しんぶん赤旗) - 「補助金額が大きいからと言って、工場立地件数が多くなるという明確な関係は確認できない。補助金90億円の三重県と2億円の栃木県を比べると、04年の工場立地件数はほぼ同数になっている」(記事より)← 姫路市の事例も、今後日本共産党の格好のネタにされること必至でしょうね。

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Posted by miki at 00:00Comments(4)企業