2006年03月11日

混迷する? スルッとKANSAIの光と影

姫路から神戸空港往復1800円・神戸空港1dayチケット(磁気カード)

スルッとKANSAIが拓く〜関西の公共交通の未来と題した、スルッとKANSAIのかたの講演を読んでいると、PiTaPa(ICカード型乗車券)も結構難しいなぁと思ってしまいます。

スルッとKANSAIとは、関西の私鉄が集まってプリペイドカード(磁気カード)乗車券を共通で使えるようにしたネットワーク。おかげで山陽電車のプリペイドカードで阪急電車も乗れるようになり、便利になりました。
おまけに、共同で無料情報誌を配布したり、イベントをすると、会社の壁を超えて関西一円からお客を呼ぶことができます。

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ラーメンでも電車を利用してお店へ行くと特典が与えられるが、ラーメン好きのお客さんは800円のラーメンに平気で2,000円の電車賃を使ってしまう。こういうイベントをすると1万人から2万人の参加者がある。
(中略)
さらに乗り放題フリーチケット。6,500kmすべてを3日間使える3dayチケットは非常に好評で、これは一種のゾーン運賃のようなもの。新規需要度が75%もあり、本来ならクルマで行った。あるいは家にいたと言う人がこれを使ったことが分かった。
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ものすごい人寄せ効果です。「3dayチケット」とか「1dayチケット」という、使いきりで乗り降り自由な切符は、運賃を気にせず「エリアを動き回る」という感覚で、単にお得なだけでなく、非常に快適な気分を味わえます。
こうしたユニークなイベントやフリーチケットは、各社から若手を集めて内容を詰め、「会社の看板を下ろし、顧客満足を唯一の価値基準として、ウィンウィンの思想で考えるように」とのこと。今ではグッズの売り上げが4億円くらい。おもしろいものがどんどん出来上がってきているそうです。

しかし、ここにICカードが登場するに及んで、議論の論理が破綻し始めます。
顧客の要望として、
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1 他の会社線でも使えるようにして欲しい。JRでは使えない。
2 プリペイドカードなので、コンビニや施設でも使えるように。
3 精算機を使わないで、でる時もスムースに出たい。
4 回数券の種類が多すぎる。おかげで財布がぱんぱん。
5 年末年始やお盆を挟む時期に定期券が切れると何時買おうか悩む。
6 プレミアムが付かないか。
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とあり、それをPiTaPaに乗せたとあります。
もちろんプラスアルファの要望を入れるのは悪くはありませんが、その前提として、「現在のカードのいいところを残す」のは最低条件だと思います。
利用者から見て、磁気カードがICカードに比べて優れていることは

1 裏面に印字されるので一目で残高や乗車区間がわかる
2 表面デザインが豊富で使い捨て式なので、企画チケット(例:1dayチケット)として使いやすい
3 同様の理由で、贈り物や景品にも最適
4 カードが薄いので財布がぱんぱんになりにくい

と、かなり多くあります。磁気カードからICカードに移行すれば、これだけのメリットを失うことになりますが、逆にICカードに移行することによる利用者の(方式上の)メリットは、非接触方式のため、カードを必ずしも財布等から出さなくていいことだけ。

PiTaPaが妙にさまざまなサービスに拘るのは、ICカードに移行するメリットが少なく、デメリットが多いことの目くらましなのかもしれません。

ICOCAは定期客にターゲットを絞り、「定期入れから出さなくていい」というメリットを突破口にCM戦略「タッチしてイコカ」で成功しましたが、その前提として、スルッとKANSAIのように磁気カード(Jスルー)の企画チケットを派手にやっていなかったこともICカードへの移行をスムーズにした要因だと思います。
そう考えると、スルッとKANSAIは、「磁気カードでの成功がゆえにICカードへの移行は困難である」という運命にあったと言えると思います。

もちろん、そこにとどめをさしたのは、後払い(ポストペイ)とクレジットカード付を強要する参加会社が多いことです。

参考
PiTaPa 問題点・今後の課題(wikipedia)
PiTaPaも不調らしい(思考維持装置)
PiTaPa(くたとけろ) - 定期利用者のことをもっと考えて欲しいというご意見。
PiTaPa(ほえなが) - 敷居が高い割にメリットが少ないと言うご意見。同感。
消費税もビックリ!PiTaPaの利用率(372log@姫路) - 導入して1年半も経つのに利用率が3.8%とは驚き。わが国交通系ICカードで、数少ない失敗プロジェクト。

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Posted by miki at 00:12Comments(0)交通