2011年07月04日

空港反対だった地元が、かくも熱心に航空便を誘致する理由

伊丹空港

私が物心ついた頃、伊丹空港は騒音公害のシンボルでした。

大阪国際空港撤去都市宣言(伊丹市)
大阪国際空港における公害をはじめとする諸問題は、今や空港の存在そのものが、公害の根元として市民生活はおろか伊丹市の存否そのものにまで重大な影響を及ぼすに至っている。
(中略)
そして今、わたくしたちは、真に人間として憩える静かで安全な生活環境を取り戻すために、大阪国際空港の撤去にまい進していく確固たる決意をここに強くひれきし、伊丹市を大阪国際空港撤去都市とすることを宣言する。
しかし、今はどうかといえば、きわめて熱心に航空便を誘致しています。

伊丹空港:長距離増便・復活で共闘 市「国に働きかけ」要請へ /兵庫(毎日jp)
伊丹市は、大阪(伊丹)空港の国内の長距離便増便・復活に向け、北海道沖縄県の空港周辺の自治体に、足並みをそろえて国への要望を伝えるよう、協力を求めていくことを決めた。
(中略)
伊丹市の担当者は「伊丹の長距離便増便は、北海道、沖縄と関西の双方の活性化につながるはずだ」と期待する。
一方で、騒音対策は「今まで通り、数値を測って監視は続けるが、以前と比べ、新しい航空機は低騒音機へと移行している現状もある」と説明する。
何せ、北海道や沖縄の自治体と共闘するという意気込みですから、半端ではありません。

なぜここまで伊丹市は豹変したのか。気まぐれなのかといえばそうではありません。記事にもあるように、いまどきの新しい航空機は、騒音などほとんど出さないのです。

知ってて快適「空の旅」-航空機について(知ってて安心・快適「空の旅」)
伊丹空港で騒音が問題になり関西新空港が計画されて建設そして開港する間は、「計画時はターボジェットエンジンの機体も結構いたが、開港時にはすっかりそれ以降のターボファンエンジンの機体ばかりになっていた」というある意味で一番変化の激しかった時代でした。
要するに、伊丹空港で騒音が問題になっていたときの航空機と、現在の航空機はまったく別物です。

では、関西空港を新設したのは間違いだったのかといえば、そんなことはなく、アジアの主要ハブ空港として、伊丹空港では役不足。
結果として、アジア大交流時代に東日本に先駆けて対応できたのですから非常に幸運です。

関空だけでなく伊丹からも北海道、沖縄に限らず、ソウル上海台北と共闘してアジア便を飛ばして欲しいものです。ちなみにこれらの都市はどこも、都心に近い国内専用空港を国際化して、国際シャトル便を飛ばしています。

参考
金浦空港、韓中日シャトル路線の中心に(上)(beseto love sonata) - 国際線の短距離路線が就航したのに伴い利用客が増加した結果、金浦空港は「首都圏の第2空港」として新たな地位を確立した。現在、金浦空港を発着する国際線は4路線、1日48便の航空機が運航している。(記事より)
台北でも国内専用空港に国際便(372log@姫路)
日本で話題にならない、空港を見る視点(372log@姫路)


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Posted by miki at 00:00│Comments(13)航空
この記事へのコメント
実際の騒音はすごいですよ! 空港の近くのマンションでは押したチャイムの音が飛行機の騒音で全く聞こえませんよ!
それに安全面から考えても普天間以上に危険な場所にあると思います。
Posted by take at 2011年07月04日 11:07
takeさん

コメントありがとうございます。
Posted by miki at 2011年07月04日 18:24
ぶっちゃけて言えば、市街地空港は危険度で考えれば基本的には「原発と同じ」だと思いますよ。
理由は「事故が無ければ便利な物(利権含めて)」ですが、「事故が起きれば取り返しの付かなくなる」と言うことです。
「事故が起きれば取り返しがつかない」と言うのは、原発では放射能汚染で住めなくなり、しかも被曝すること。空港では墜落時に漏れた燃料で住宅地炎上、そして死傷者多数の大惨事・・・・・
関西地方には代替として「関空」と「神戸空港」が有るではありませんか?
安全性を考えれば伊丹は廃止にするのがベストな選択だと思います。

長文失礼致しました・・・・・・
Posted by しろきち at 2011年07月04日 23:41
しろきちさん

コメントありがとうございます。
貴重なご意見に乗じて長文失礼します。

原発って往々にして田舎にあって、それを都会に送電している。
危険は地元で、利便さを離れた都会の人が享受しているというアンバランスな構図です。

新幹線もそうです。京都や大阪、神戸の人にはピンと来ないかもしれませんが、地方ではこんなことがあります。
姫路駅は通過するのぞみがあるのですが、通過するのぞみほど騒音はすごい、しかし姫路には利便性をもたらさない。一方、停車するひかりや一部ののぞみは速度を落とすので騒音を出さないけど、こいつらは利便性が最大。
つまり、騒音と利便さのバランスが悪い。(反比例)

一方空港は、近所の人がもっとも利便性を享受し、離れるとそれに伴い不便になる。
メリットとデメリットが共存している(比例)という点で、バランスがいいと思うのです。
Posted by miki at 2011年07月05日 23:26
伊丹周辺の自治体らは、自分さえよければよいのですよ。
伊丹の規制緩和で、関空がますます食われることになっても、そんなことはどうでもいいのです。

しかも、騒音対策費は、しっかりもらっている。
騒音が増えてもいいから、規制緩和してくれというなら、騒音対策費を出す必要はない。周辺自治体で負担すればいいのです。

一方の関空支持派も、2期工事など分不相応な投資を強行したことは棚に上げて、伊丹に責任転嫁したり、利用者の利便は2の次で、関空だけが栄えればいいという姿勢が目立つ。

大阪は北も南も自分のことしか考えない連中ばかりですね。
Posted by かにうさぎ at 2011年07月05日 23:45
かにうさぎさん

コメントありがとうございます。
Posted by miki at 2011年07月06日 00:19
>ちなみにこれらの都市はどこも、都心に近い国内専用空港を国際化して、国際シャトル便を飛ばしています

前記に追記しますが、これらのアジアのハブ空港と関西を同一にはできません。ソウルや東京は、全世界に飛びたてるA級のハブ空港ですが、関空はアジア、それも中韓路線が大半というB・C級のローカル国際空港に過ぎません。

利用者数、発着回数、路線数、就航都市などの面で、関空はハブ空港の競争からは完全に脱落している。

伊丹に近距離国際線を復活するなら、数少ない関空の得意のお株まで奪う結果になるでしょう。

それでも、伊丹にというなら、関空の廃止・貨物専用空港化も検討せねばなりません。
Posted by かにうさぎ at 2011年07月06日 22:19
はじめまして。
mikiさんの航空関連の書き込みを拝見していますと、
1983(昭和58)、光文社より発刊された
清水馨八郎著「航空新幹線 日本ほど飛行機に適した国はない!」に
心酔されている様子がうかがえますね。
お読みになったのでしょうか?
Posted by えるどらど at 2011年07月07日 00:36
http://hime.tenkomori.tv/e243364.html#comments
>伊丹空港で騒音が問題になっていたときの航空機と、現在の航空機はまったく別物です。

住環境等での騒音対策が進んだことも大きいですね。

>では、関西空港を新設したのは間違いだったのかといえば、そんなことはなく、アジアの主要ハブ空港として、伊丹空港では役不足。

関西空港の間違いは、「泉州沖に作ったこと」ではないでしょうか。
航空需要から伊丹空港の規模では限界が来ることが明らかでしたが、騒音問題ばかりではなく、拡張する用地もありませんでしたから、他に造るしかなかったわけですけれども、神戸とか大阪南港付近とかであれば、便利な1つの空港に集約されていたかもしれません。

ちなみに、「役不足」ですが「能力に対して、役目が軽すぎること」(大辞林)が正しい意味です。
もっとも、世の中では誤用の方が使われているといってもいいかもしれませんから、そのうち辞書にも載るかもしれません。例えば「確信犯」は、本来「道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が『悪いことでないと確信してなされる』犯罪」(大辞泉)と言う意味ですが(イスラム過激派の自爆テロみたいなのが本来の「確信犯」)、もともとは誤用であった「『悪いことだとわかっていながら』行われた犯罪や行為。また、その行為を行った人」(大辞泉)という意味も載りはじめています。
Posted by たー at 2011年07月07日 03:35
しろきちさん>
かにうさぎさん>
こんにちは。

伊丹が存続したり、神戸空港もできた一番の原因は関空自身にありますね。

伊丹は騒音問題や航空需要拡大に対する能力の限界がありましたので、新空港の建設が不可避で、紆余曲折を経て泉州沖に造られることになりました。この際、将来的に神戸沖にも国内空港を造る約束で、不便になってしまう兵庫県や神戸市などが折れた形です。

ところが、大蔵省は費用対効果の面で建設費が莫大な関西新空港の全体構想に反対していましたから、運輸省は予算を確保できそうな1期のみで始めました(これでも見込み違いで建設費が膨らんでしまった)。

そうすると需要拡大に対して能力不足は明らかで、関空だけでは関西経済に大きな不利益を与えることが懸念されましたので、1990年、国は伊丹空港周辺と存続協定を結んで伊丹を存続させ、2空港体制でいくことになったと言うわけです(この時点で神戸空港の計画はあっても、具体化はしていない)。
騒音問題も、社会問題になっていた1970年頃と比べて、かなり改善していたことも存続できた背景の一つにあります。

>伊丹周辺の自治体らは、自分さえよければよいのですよ。

航空会社や多くの利用者はもっとドライで、便利な方を使う、それだけの話です。
関空開港直後、伊丹は一時閑古鳥が鳴いたような状況になりましたが、関空では不便なことがわかったので、需要の伊丹回帰が始まりました。
大阪府民だけを見れば総じて伊丹も関空もそう大差はないようですが、京都市や神戸市など関西圏の需要を考えると伊丹の方がアクセスが良いので、伊丹の人気が高いわけですね。
仮に伊丹を廃止したら、ドル箱路線である羽田便の利用者を中心に、関空や神戸ではなく、新幹線に流れる利用者は実に多いと思います。

>騒音対策費は、しっかりもらっている。

そういう約束で存続協定が結ばれています。
Posted by たー at 2011年07月07日 03:58
かにうさぎさん

コメントありがとうございます。
Posted by miki at 2011年07月07日 21:03
えるどらどさん

コメントありがとうございます。

>お読みになったのでしょうか?

その本の存在や著者のかたは知りませんでした。
どういう内容なのか、機会があったら見てみたいと思います。
Posted by miki at 2011年07月07日 21:06
たーさん

コメントありがとうございます。

関空、伊丹、神戸という数そのものはともかく、それぞれの空港の経緯に
問題がないのかといえば、いろいろあると感じます。
関空はあまりにも金をかけすぎ(そのひとつの理由が島が遠すぎた)
とか神戸の資金計画の甘さとか。
しかし、現状を踏まえて、より改善されるような方向に向かえばと思います。
単に、何々を廃港にすればすべてうまくいくとか、何々の廃港がすべての前提みたいな大雑把な議論では、ついていける人は限られる気がします。
Posted by miki at 2011年07月07日 21:13
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