2011年02月07日

東アジアの底力。庶民教育世界一の大教育圏

加地伸行立命館大学教授(姫路・まねきホール

副会長がブログで書かれているように、一昨日、姫路で母校の同窓会総会があり、産経新聞正論のメンバーでもある加地先生に、「日本人の忘れたもの - 教育・家庭・道徳」という題名で講演をしていただきました。

儒教の研究者なので、儒教の影響圏である東アジア(中国、韓国、日本)と欧米との違いという視点から、教育論を話されましたが、なかなか興味深いお話でした。

要約すると以下のような内容です。
欧米(キリスト文化圏)でいう神と、東アジア(儒教圏)でいう神は異なる。欧米でいう神とは、絶対的なもの。何でも叶えてくれる全知全能の神。だから人間は、神様から見れば大差ない。平等であるべき存在。公教育など不要、牧師や金持ちのみが教育を受けてきたという歴史がある。

しかし、東アジアの神は学業の神、商売繁盛の神など、ひとつのことしか叶えてくれない専門的な神。絶対的な神はいない。社会には2割の上位層と8割の下位層があり、8割はほっておいたら生きていくことができない。だから彼らを教育する必要があるという理由で、初等教育が充実した。江戸時代の寺子屋などその典型。
近年東アジアの新興国が急速に発展した背景はこういうところにある。

欧米では個人主義が発達しているが、それはあくまで絶対的な神の存在があるため、社会に抑えが効く。
しかし、東アジアでそんな神は存在しない。
にも関わらず、戦後日本では個人主義という側面のみを取り入れようとしてきた。それによって教育・道徳がうまくいかなくなっている。

明治時代、日本は欧米からの近代化要求に押されて一族主義から個人主義への転換を迫られた。しかし、明治政府はいきなり個人主義への転換は負担が大きいと考え、家族という単位を設け、ワンクッション置いた。
家長に権限を持たせることで、個々人が利己主義に走り国力が衰退することを防いだ。

戦後、家族主義から個人主義へ移行するに従い、絶対神を持たない東アジアの我が国は、教育や道徳面で弱さが出てきている。もう少し東アジアや我が国の歴史背景を考慮し、家族や先祖を聖域化するような知恵が必要ではないか。例えば仏壇を見直すとか・・
ネットでいろいろ見ていると、たしかに東アジアの識字率は南アジアやアフリカよりも高くて、例えばバングラデシュよりも北朝鮮のほうが識字率が高いというような書き込みも見られました。
正確なことはわかりませんが、東アジアの底力の一端を見る思いがします。

参考
【正論】立命館大学教授 大阪大学名誉教授 加地伸行(MSN産経ニュース) - 欧米人は頭(知性)も体(感性)もともに個人主義。中国人、朝鮮民族は、自力の近代化がなかった、いや、できなかったので、頭も体も依然として伝統的家族(一族)主義。これに対し、日本人は外面的近代化に熱中したので頭は個人主義、体は家族主義と、分裂している。この分裂は本質的に結合できない。(記事より)
一族制度・家制度と個人主義のあいだ(石文化対談) - 明治の近代化が始まると、ヨーロッパの「個人主義」の考え方が入ってきた。しかし、「一族」からいきなり「個人」には解体できないわけですよ。一族といっても現実には所帯の集まりですから、そこで一族所帯毎の独立という形の中間守備をとったんですよ。これなら、皆がかろうじて納得できる近代化だった。いきなり個人主義になったら大混乱が起こるわけです。(記事より)


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Posted by miki at 00:00│Comments(0)交通
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