2009年10月13日

日本にハブ空港がない? ハブ論議は冷静に

成田空港

前原国土交通大臣が、「日本にハブ空港がない」と言っていますね。

国交相、羽田の国際ハブ空港化示す 橋下知事と会談(asahi.com)
前原氏は「日本にハブ空港がなく、仁川空港(韓国)が日本のハブになっている」と会談後に記者団に延べ、2010年に羽田の発着枠が増えるのを機に国際化をさらに推し進める意向を示した。
この発言、引っかかる人もいるんじゃないでしょうか。

間違いだらけのハブ空港論(東雲の独語)
成田は現実に世界に冠たるハブ空港である。ユナイテッドANAJALアメリカンの提携のおかげで東アジア(特に中国線)の乗り継ぎ需要は相当なものであるし、豪州や南太平洋地域と欧州の間でもハブ空港の機能を果たしている。
それだけではなく、ユナイテッドとノースウェストは成田を自社のハブとしているのは周知のことだ。特にノースウェストのアジア線などは日本発着の旅客はわずかであり、アメリカからでも半分か三分の一の旅客は成田で乗り換えている。そのためにノースウェストは北米7都市(もうすぐデルタとの統合に伴う増便でNYアトランタソルトレイクシティーが入って10都市)からの便とアジア10都市の便をわずかな時間で接続させている。おかげで、以前に書いたように、午後1時ころから4時ころの成田の第一滑走路はアジア各地からのノースウェストの便が着陸し、アメリカ各地に飛び立っていき、まもなくアメリカからの便が到着して6時ころを境にアジア各地に飛び立っていく。こんな空港は世界に成田だけである。
成田は、世界有数の国際ハブ空港なんだという認識は、必要と思います。

前原大臣の頭の中はこうです。
1 日本には何箇所か国際空港があり、地方の人は地方空港から国際空港まで飛び、国際線に乗り換えるのが自然である
2 ところが、国際空港(と位置づけられる)成田や関空は、羽田や伊丹といった国内専用空港と離れているため、国内→国際線の乗換えが不便
3 国内→国際線の乗り換えが便利なハブ空港が国内にないので、結果として地方空港→仁川→国際線利用が増加している
成田は世界的な国際ハブ空港ではあっても、前原大臣の頭にある国内→国際乗り継ぎ空港としてのハブ空港ではないわけです。

「アジア諸国は大規模空港を次々造っていて、例えば韓国では国際ハブ空港である仁川空港を造った。しかし日本には国際ハブ空港がなく、世界から遅れている」という意見に対しては、「成田という国際ハブ空港がずっと以前からあり、北米路線を中心にアジアのハブ空港として君臨してきた」と切り返すことが可能です。

一方で、国内線と国際線を分離したため、国内→国際線の便利な乗り継ぎ空港としてのハブ空港は、存在しないということは言えます。
では韓国はどうかと言えば、ソウル市内には金浦という国内専用空港があり、韓国国内からの国内/国際ハブ空港は、存在しないということになり、日本と事情は大差ありません。

韓国は、国内よりもむしろ、隣国・日本や中国の経済力、航空需要に照準を合わせてハブ空港を運営していますが、そもそも韓国国内だけでは航空需要が足りなかったという背景があります。

「国際ハブ空港」と言われる空港には、アムステルダムスキポールシンガポールチャンギなど、自国の需要だけでは飛行機を飛ばせないから、他国同士を中継することで成り立つ空港が目立ちます。日本には、自国に旺盛な需要があったから、これまで、韓国のように「国際ハブ空港」を敢て必要としなかったのです。

ハブ空港にこだわりすぎる単純な論議にも疑問があります。
日本からせいぜい数時間のアジアに飛ぶのに、わざわざ乗り継ぎをしたい人はいません。北京にしろソウルにしろ、直行便が望ましく、例えば岡山から飛んでない路線があれば、広島から飛ぶといった対応の方がよほど自然。空港まで自家用車で移動するような地方の場合は尚更です。

結局、前原大臣が提起する問題は、地方空港から仁川を経由して欧米などの長距離路線に乗り換えるケースに限られると思います。
ただ近年は、搭乗航空会社の選択が、航空会社の国籍と言うよりも、スターアライアンスか、ワンワールドか、スカイチームかといった航空連合の選択に移りつつあり、連合の事情によって経由する空港の国籍は変わる。そんなレベルの話になりつつある気がします。
日本での空港乗り換えに拘る理由が、どれほどの意味を残しているのでしょうか。

大事なことは、航空利用者視点の利便性やコストパフォーマンス。日本にハブと呼ばれる空港があろうがなかろうが、そのこと自体に大した意味はありません。

参考
「羽田をハブ空港に」と前原国交相、橋下知事反発(YOMIUR ONLINE) - 「関空がハブ化しないのに、(府が関空に)お金を使うのはおかしい。府民生活に振り向ける」と反発、関空への財政支援を打ち切る可能性を示唆した。(記事より)←「ハブ空港」「ハブ化」という言葉を金科玉条のごとく取り扱う様が、滑稽に思えます。
ボーイング次世代機。心臓部は播磨から(372log@姫路) - 「ハブ空港」というのは、主に供給者の視点です。しかし、ボーイングのいう「ポイントトゥポイント」というのは、乗客の率直な要求に基づいた発想です。787に代表されるように、航続距離が伸びていけば、今よりもハブ空港の役割は低下し、必要な都市間をダイレクトに直結するニーズが強まっていきます。(ブログより)
神戸からJALを追い出し、新興航空社の国際便を(372log@姫路) - もうJALにとっての古き良き時代は終わっているのです。国交相は「できれば2社体制」というけれど、世界の現実に目を向けるとそうもいかない気がします。(ブログより)← 国際線は基本的に無国籍の世界。空港や航空会社の国籍に拘るというなら、国防上の理由なのか何なのか、きちんと理由を示さないと、情緒的に言ってるようにしか聞こえません。

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Posted by miki at 00:00Comments(8)航空